日本の伝統食 鯨肉

鯨探求

天保三年に刊行された『鯨肉調味方』を紐解くと、鯨のありとあらゆる部位が様々な用途に用いられていたことがわかります。
鯨肉と軟骨は食用に、ヒゲと歯は櫛などの手工芸品に、毛は網に、皮は膠に、血は薬に、脂肪は鯨油に、採油後の骨は砕いて肥料に、マッコウクジラの腸からは香油を。これほど深く鯨と関わっているのは大和民族だけかもしれません。

各部位の名称

①髭(ひげ)
浄瑠璃の人形の間接部分などに使用される。あの動きは鯨の鬚でしか出せない。
⑨尾羽(おば
尾羽雪・さらしくじらなどとも呼ばれる、くじらの尾っぽの皮の部分。
②歯茎
浄瑠璃のビリ、オサネ、小ヒゲ、シカとも呼ばれる。
⑩本皮
皮とそのすぐ下の皮下脂肪のこと。意外とサッパリとしている。
③鹿の子
鯨のアゴ骨をおおっている部分。
脂肪の中に肉が斑点模様に散らばっているためこの呼び名が付いた。
⑪百尋(ひゃくひろ)
鯨の小腸。ややくせがある。輪切りにして美しく盛り付ける。
④骨
骨からは肥料や鯨油が採れる。駆虫剤などにも利用していた。
⑫胃袋
さえずりに形は似ているが、味はさえずりとは違いサッパリとしている
⑤肝臓
骨からは肥料や鯨油が採れる。駆虫剤などにも利用していた。
⑬心臓
一般に専門店でしか目にすることが出来ない、通が好む鯨の内臓。
⑥赤身(背肉)
背中の赤身。竜田揚げや南蛮漬けなど広い用途に使われる。
⑭畝(うね)
ウネともウスネとも呼ばれる。畑の畝のような形状に由来。ベーコンにも加工される。
⓻まめ
腎臓のこと。牛レバーよりも美味しくもちもちとした口あたり。
⑮さえずり
鯨の舌の部分のこと。
⓼尾の身
尾っぽに近い霜降り状になった良質の脂身になり鯨肉の中でも最も美味しいところ
召し上がり方

赤身(お刺身)

生なのに鯨特有の臭みがなく、口の中で旨味が広がります。脂身が少ないので後味もよく、ステーキ、生姜焼き、鍋など色々な料理に使用されます


まめ

ボイルされているため、薄くスライスして生姜醤油・酢醤油でお召し上がり下さい。また、“畝” “百尋” “まめ” の三種類で盛り合わせていただくとより一層楽しめます。

尾の身

3ミリ~5ミリほどの厚さに切り、生姜醤油にんにく醤油でお召し上がり下さい。また、口の中で解けるくらいのシャーベット状で頂くとより一層美味しくお召し上がれます。

尾羽(おば)

ボイルされているためそのまま酢味噌でお召し上がり下さい。

皮くじら(本皮)

ほとんどが脂肪分とゼラチン質から形成されているので、季節の野菜を使った煮物に使用されます。

百尋(ひゃくひろ)

サッパリとしていて独特の食感と風味があり、大人を楽しませてくれます。薄くスライスし、ポン酢、唐辛子醤油、生姜醤油などで召し上がってください。

さえずり

鯨の舌は柔らかくてまるで口の中でとろけるよう。そのまま生姜醤油や酢醤油で。また、ハリハリ鍋などでも美味しく召し上がっていただけます。

畝(うね)

薄くスライスして生姜醤油・酢醤油でお召し上がり下さい。

ベーコン

畝を塩漬けした後、ボイル、着色させベーコンに加工したものです。豚肉のベーコンよりヘルシーで食べやすく、噛みしめるほどに、ほどよい塩加減としこしこした歯ごたえが楽しめます。